2022.07.14 NEW お知らせ 活動報告
緊急メッセージ:安倍元総理銃撃事件に関わるAED使用について
安倍晋三元総理がお亡くなりになりました。日本AED財団一同、心からお悔やみ申し上げます。
事件の際に施された安倍元総理への胸骨圧迫やAED について、多くの質問を頂いております。その中で特に大切だと思われるふたつに関して、お答えしたいと思います。
ひとつ目の質問は「心停止(心肺停止)であっても、AEDが有効でない場合があるのか」というものです。
「心停止(心肺停止)」とは、心臓がポンプとしての機能を失い、意識や反応が無く、呼吸もない状態のことです。これには大きく分けると二通りあります。
第一は、心臓の筋肉が(心室細動と呼ばれる重篤な不整脈などで)細かく震えてしまい、ポンプ機能を失った状態です。この状態は、心臓のリズムを電気ショックでリセットし、不整脈による心臓の細かい震えを取り除くことが出来れば、救命出来る可能性が相当高いといえます。AEDはこの電気ショックが必要な状態(つまり心室細動による心停止)か否かを判断し、必要な時に「電気ショックが必要です」と教えてくれます。
第二は、心臓の働きが極端に弱くなるか、全く止まってしまった状態です。心臓の働きとは、十分な血液を脳や全身に送ることです。これが、例えば大量出血などの理由で血圧が極端に下がった場合には、その機能を果たせません。全く止まってしまった状態も同じです。この状態でAEDを装着すると「電気ショックは不要です」とアナウンスされます。電気ショックは不要ですが、心停止状態であることに変わりはなく、脳や全身に血液を送らなければなりませんので、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う必要があります。
つまり全ての心停止に、AEDによる電気ショックが有効な訳ではありません。しかし、心停止状態の人にAEDを装着すれば、このふたつのうちのどちらのタイプが起こっているのかを判断し、必要な時に電気ショックをするように指示してくれますので「AEDは有効」だといえます。従ってどのような状況でも心停止を疑ったら、直ちにAEDを使用してその指示に従うことが必要です。
加えて重要なことは、電気ショックが行われた後も、救急隊が現場に到着するまで(あるいは傷病者が嫌がるような仕草など何らかの反応を示すまで)胸骨圧迫を続ける必要があるということです。電気ショックが行われた後でも胸骨圧迫が必要なのは、電気ショックが成功してもすぐに力強い心臓の収縮が得られる訳ではないからです。
たまたまその場に居合わせた市民による、胸骨圧迫とAEDの使用が重要なことをご確認ください。
ふたつ目の質問は「出血している人に胸骨圧迫をして良いのか」というものです。
出血している部位が分かる場合は、その部位を押さえて圧迫止血をした上で、胸骨圧迫を行うことが望ましいですが、実際には難しいことが多いと思われます。原因に関わらず、心停止の際に何より優先すべきは、脳や全身に血液を送ることです。倒れている人が心停止(反応も呼吸もない、あるいは普段通りではない状態)であれば、その原因に関わらず直ちに胸骨圧迫を開始して下さい。
今回の事件では、現場スタッフが胸骨圧迫を続けながら「AEDを持って来て下さい」と呼びかけ、すぐにAEDが届きました。素晴らしい行動です。
昨今ではSNSの普及により、心停止になった人のプライバシーや尊厳が著しく失われる場面が見受けられます。これは安倍元総理のような公的な立場の人であっても同様です。ぜひご配慮をお願いいたします。
令和4年7月14日
公益財団法人 日本AED財団